†鑑査委員制度†
俺の家は5年前に母親が蒸発して、今は父親の紗夜と俺。
そして妹の父1人子2人の父子家庭だ。
紗夜は3年前に脱サラして、今はホストクラブを経営している。
本名は椿塔矢、源氏名が紗夜。
俺は面白がって紗夜って呼んでやってる。
まぁ元々、親を名前で呼ぶ家庭だったから、あまり違和感なく定着しちゃたんだけど。
今ではよっぽどの事がないと注意もされない。
母親がいなくなってから、家事全般は何とかこなせるようになったが、どうにも料理は俺も紗夜も未だにからきしだ。
唯一女手の妹もまぁ今は役にたたないしな・・・
仕方なしにここ最近はコンビニ弁当とかファーストフードが中心の生活にならざるを得なかった。
まぁ紗夜が作った黒こげハンバーグ。レア状態の唐揚げを食うよりはましだから不満はない。
おぼんに乗せた牛丼を持って、自分の部屋より手前にある妹の部屋を足で軽く小突いてノックする。
「千紗」
部屋にいるのは確実だが2、3秒返事を待っても何の反応もない。それどころか物音一つしなかった。
千里は牛丼を一つ手に取ると、おぼんに乗せたままの状態の方をドア下にそっと置いといてやった。
「ゴミは廊下に出しておけよ」
そうまた声を残したが、やはり返事は返ってこない。
千里は諦めて、その場から一歩足を踏み出したが、突如鈍い音がドア越しに響いて振り返った。
たぶん中で何かを強く投げつけた音だ。
千里は何か言おうと口を開きかけたがぐっと我慢し、その場から引き揚げて自室にこもった。