†鑑査委員制度†
鑑査委員制度?!
「――であるから、AまたはBの起こる場合は、a+b通りとなります。それでは次は例題3ですが・・・」
柴田先生が癖のない几帳面字で、黒板を次々と文字や数字で埋めてゆく。
俺はそんな様子を投げやりに眺め、今日1日全く授業に集中できずにいる自分にうんざりとしていた。
かろうじてノートを書く手は休めず動かしていたが、それより頭は昨日の出来事でいっぱりだった。気づくとぼんやりとしてしまうのだ。
ダメだ、わかんねぇ…。
右手で眉間に触れる。
教科書の練習問題に目を通していたのだが、内容が何一つ呑み込めない。というか理解しようと自分がしていないのが自覚できた。
俺は自分に内心舌打ちをし、時計に目をやる。もう残り5分も無い事を確認し、ひとまず目の前の問題を放棄する事にした。
そして密かに周辺の奴らを見渡す。
俺の席は、6列ある席の真ん中一番後ろなものだから、だいたいの奴の様子が窺えるのだ。
机の下で漫画を読んでいる男子や、ケータイを器用に先生が黒板を書いている時だけいじっている女子が目についた。