†鑑査委員制度†
「初めは吹奏楽部と同じ括りにピアノパートとでも言うべきなのか・・・例えば合唱部のコンクールや学校の定期演奏会に吹奏楽部員として参加していたんだ。それが徐々にピアノだけ独立してピアノ部になった。活動は以前と変わらず他の部の援助や定期演奏会が主だな」
「・・・うちの学校って、吹奏楽部とは別に管弦楽部とか無いんでしたっけ?」
「部員は少ないが、有るよ。もちろん管弦楽部の援助も活動範囲内だな」
何だかこの体制には違和感を感じる・・・
一般的に言えばトランペットやホルンなどの楽器を使って演奏するのが吹奏楽部。バイオリンやチェロなど、弦楽器を使って演奏する部活が管弦楽部だ。
まぁ、別にそうわざわざ線引きする必要もないんだが、実際吹奏楽だの管弦楽だの関係なく一つの部活の括りとして活動している学校もあるわけだし。
ただピアノってのは元々弦楽器だから、そもそも吹奏楽部所属というのが違和感があるにはあるってだけだ。
しかも管弦楽部が有るにしろ無いにしろ、一つの楽器だけで成り立つ部活というのも稀な話しだ。
加えて管弦楽部が存在してのピアノだけ独立した部なんてなおさら可笑しな話だ。
それにピアノ部は聞く限り弾ける奴が1人いれば何ら困らない部活だ。助っ人にしろ何にしろ、奏者は1人で十分だろうし。
まぁ部員1人で部活が成り立つというのは少々引っかかるが・・・わざわざ部員を増やす必要性はピアノ部にはない気がした。
「コンクールの助っ人にしても、僕がいる必要はないですよ。ピアノ部に人数はいらないかと思われますが?」
瀬川透はにっこりと微笑んだ。思いっきり人をあしらう時の笑みである。
しかし武藤は意にもかえさない。むしろニヤリと口角を上げた。
「あぁ確かにそう人数は必要ないが、偶数の部員数は確保しておかなくては話しにならなくてね」
「はぁ、偶数?」
「まだ言ってなかったがピアノ部は毎年秋にあるピアノコンクールに出場しているんだ。連弾のな。この連弾のコンクール出場こそが日下辺高校ピアノ部の真骨頂だよ」
武藤先輩の顔に人の悪い笑みが浮かぶ。逆に俺の顔からは笑顔が掻き消え、一瞬呆けた。