†鑑査委員制度†
第二章
タブーと琴線
「透さん、これなんかどうです?」
東城さんはいっそ紺色に近い、深い青のカットソーを掲げては思案顔だ。俺はそんな様子を眺めて、無言で頷く。
「じゃこれで決まりますね。お会計済ましてきますから透さんはその辺のベンチにでもいて下さいな」
「あ、東城さん。俺本屋寄りたいから先にそっち行っててもいい?」
「いいですよ」
俺の問いににっこりと微笑むと、東城さんはカゴに今しがた手にしたカットソーを入れ、レジへと向かった。
凛と背筋を張って姿勢よく歩く東城さんの後ろ姿を眺め、やがてその手に持つ買い物かごへ視線を移す。
山盛りになった衣類に若干苦笑いが浮かんだが、俺も背を向け三階の本屋へと向かった。
―――明日から夏休みという開放感から昨日は少々夜更かしし、今朝はゆっくりと起き遅い朝食をとるという、俺は早くも長期休みならでわの時間を謳歌していた。
これも3日後の勉強合宿や、休み前半に渡る夏期講習で午前中が潰れるからと思うからこそ、夜の時間が惜しく思えた。
まぁその分昼間寝ているわけだから1日の時間は変わらないはずだけど、なぜか夜間過ごす時間とは昼の時間に比べて尊く思えて得した気分になる。
さて、今日はどうするかな?
軽く焼いたマフィンにマーマレードを塗りながら考える。
映画でも借りてゆっくりと過ごそうか、それとも読みかけの本を読んでしまうか・・・
今日1日をどう有意義に過ごすかを考えるのは、なかなか楽しい。
すると東城さんから合宿に必要な衣類や雑貨を買いに行かないかと提案された。
家にあるやつでいいよと答えたが、ついでだからと服やら何やら揃えようという話しに膨らむ。
この年頃にもなると、いくら東城さんと言えどさすがに一緒に買い物に行くというのは気恥ずかしさがある。しかし東城さんがあまりにも楽しそうにしていたので付き合い半分で結局行くことにした。