†鑑査委員制度†
きっと昨日までの俺なら、そんな事をいちいち気にする事もなかっただろう。
しかし自然と今日は彼らを目で追ってしまう。
ケータイをいじってるのは金沢奈美と久保田莉加か?それと漫画を読んでいるのは野球部の木村星夜だな。
木村星夜に関しては、たしか1時間目と3時間目も読んでなかったか?いや、それどころか4時間目も読んでいたような?
おいおい木村、お前いったい何しに学校来てるんだ?
改めて気づき、俺はほとほと呆れてしまった。
まぁ別にいいんだ。授業時間をどう使うかは、結局はそいつ次第で俺には関係ない。
そう、関係なかったはずなんだ。
でも俺は今日一日、全く授業に集中できない変わりに気付いてしまった。
昨日、俺に突然降りかかってきた鑑査委員制度とかいう厄介事。
何だか俺たちの日常の様子を、学校の教師連中に情報をリークする事らしいが・・・
もちろん悪いだろう事も例外ではない。
もしやこれこそまさに、その対象になるんじゃないか?
そこまで考えたところで心底うんざりとした。
俺、そんなくだらない事しなくちゃならないのか?
これからどうなんだろ・・・まるで遠くの物を見つめる思いだったその時。授業の終わりを告げるチャイムが鳴った。
柴田先生が数学係(教科ごとに連絡事項や手伝いをする係りがある)は放課後、宿題のプリントを職員室に持ってくるように指示をして授業を畳んだ。
って、数学係って俺だ。
あぁつまりこれが今日の先生の鑑査委員制度絡みの呼び出しサインなわけか。偶然俺が係だったのが功をそうしたわけだ?
担任なんだからこの後のホームルームでも、何なら今の時間でも十分にプリントを回収する時間があるはずだろうしな・・・
理由もなく呼び出される構図ってどうなんだ?と考えていただけに、なるほどと関心した。
何だかついでの使いっぱしりな気がしないでもないのが少々気にくわないが・・・
とは言っても俺に拒否権も断る理由もないので素直にプリントを回収する事にする。