†鑑査委員制度†
地下の食品売り場で夕飯の食材とスイーツ店でプリンも買い求め、その荷物を抱え百貨店の屋上駐車場へ。
今日は家の車庫に入っている車ではなく、東城さんのクリーム色のワンボックスカーで来たのでそれを探す。
こぢんまりとした丸いフォルムの車は難無く見つかった。さっそく後部座席に荷物を押し入れにかかり、終わると俺はその横へ荷物を避けつつ乗り入れた。東城さんも手にしたケーキボックスの箱を隣座席へ置くと運転席へと落ち着く。
と、そのタイミングでこもった電子音が車内に響く。とっさに自分のポケットに手を忍び込ませたが・・・俺のではない。
どうやら東城さんのケータイのようだ。
東城さんは特に慌てる様子もなく、画面も確認せず電話に応じていた。
少しして俺はおや?と思う。何だか東城さんの様子が変だ。
困ったように眉を下げ電話越しに神妙に返事を返してした。
聞こえくる単語を拾うに、どうやら東城さんの旦那さんからのようだった。
「今日はもう無理ですよ。お勤めもまだ終わってませんし・・・明日の午後伺いますから・・・えっ、ちょっとわがまま言わないで下さい!」
何だかよく分からないが少しこじれている気配を感じ取り、お節介かと思いつつも小声で問いかけた。
「どうかしたの?」
「えぇちょっと緑ヶ丘病院の方から・・・夫から急な頼まれごとをしてしまいまして」
そう答えるなり東城さんは完全な困り顔になった。やっぱりもう長いこと入院してるという噂の旦那さんからか・・・急な頼まれごとだなんて何かあったのだろうか?
「家からなら逆方向だけど、緑ヶ丘ならここから近いし俺は構わないから病院寄ったら?」
「えっでもですね・・・」
「大丈夫だよ。冷凍物とか生物買ってないし、俺は車で待ってるよ」
「ダメですよ!車内は暑いです!それにいくら保冷剤が入っているとはいえプリンはまずいです!」
「じゃぁ差し支えなければロビーで待ってるよ。プリンもお見舞いとして持っていけばいいし」
そこまで言ったが東城さんはまだ遠慮していた。細かい詮索はしないが、病人がわざわざ電話で用を言いつけるなんてよっぽどに思えるし、できれば優先させてあげたいじゃないか?