†鑑査委員制度†
結局のところ、東城さんは何度も平謝りとお礼を繰り返し、俺たちはこのまま緑ヶ丘病院へ向かうこととなった。
(ただしプリンは俺が食べることと強く念押しされたが)
街の中心部にある百貨店を出てからものの数分で、住宅地を抜ける。そしてまた少し賑やかな通りへと出た。ビルとビルの合間のゆったりと開けた土地に、灰色の大きな建造物が見え目を引いた。
上部に赤の十字架、そして『緑ヶ丘大学総合病院』の文字が続いている。
緑ヶ丘病院は全体的にまだ真新しく、どうやら1階部分がガラス張りで吹き抜け構造のモダンな造りになっているようだ。およそ病院らしからぬ造りに、俺の目にはどこか機械的にさえ映って妙なもの寂しさを感じた。
緑濃い、深い色をつけたハナミズキの並木道を抜けながら、俺はそっと病院から目を逸らす。
「俺、このへん初めて来たかも」
「あまりこちらにはご縁がありませんものね」
ふふっと笑った東城さんに旦那さんのことについて尋ねるべきか迷う。
もう10年近い付き合いになるが、不思議なほど今まで東城さんのプライベートについて聞いたことがなかった。
それは俺が尋ねてこなかったというのも大きいかもしれないが・・・
今さらどんな風に聞けばよいのか、またどこまで立ち入ってよいものかとしばし考えていると、いつのまにか病院の駐車場へと車がつけられていた。
これまた駐車場もずいぶんと広い。