†鑑査委員制度†


薄緑のガラス張りの自動ドアを抜け、俺たちは並んで病院のエントラスを抜ける。


入ってすぐの左側があの吹き抜けの空間になっていた。


観葉植物とアイボリー色の優しい色合いの椅子がゆったりとした間隔で置かれている。


規則的な並びではなかったが、そこに雑然さは感じられず開放的な印象を受けた。天井が異常に高いこともそう感じる要因の1つだろう。


「あそこで待ってるよ」


視線をそこへ向け答える。


「30分もかからないと思いますから」


「大丈夫だよ。ゆっくりしてきて」


そう言い軽く手を挙げ東城さんを見送った。


俺も手にしたケーキボックスを一度持ち直し、パジャマ姿の子どもや点滴をコロコロと転がしているおじいさんたちに混じってアイボリー色の椅子の1つに腰掛けた。


腰掛けてから何となく上の方を見上げる。吹き抜け部分は2階から4階までの廊下が見える造りになっているようだ。見上げた位置から脳内で反転させ、それがL字型になっていることを知る。


そこで看護士や患者が行き来する様子をなんとなく眺めていた。


ふと、視界の端に何かを捉えた気がして再び視線を前方へと戻した。


見渡すまでもなくそれは難無く見つかる。


なぜ俺はここへ来てすぐに気がつかなかったのだろう?


短く息を止めた。


視線の先、日が射し込むガラス張りの窓辺に白いグランドピアノが置いてある。


光を反射して縁が金色に輝く。純白の白ではなく、少しくすんだ感じの、まるでホワイトチョコレートのような色合いの白いピアノだ。


なんでこんなところに・・・?
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