†鑑査委員制度†
柴田先生の指示通り俺はプリントの束を両手に抱え、職員室へ続く階段を降っている。
一体今日は何を聞かされるのか、正直なところおっかなびっくりだ。
自然とため息が出る。
階段を降りきったところで一度歩みを止めた。
このまま右に曲がれば、すぐそこは職員室なのだ。
俺、柴田先生っていまいちまだ掴めきれてないんだよな・・・
自分の性格上、少し言葉を交わせば誰しもある程度の個性を付けられるという自負があるのだが、こと柴田先生に対しては未だに判断に迷いが出るところだ。
あれは天然なのか計算なのか・・・何にしてもまだ得体のしれない存在な事には変わらないので、気を許す事なく気張らなくてはいけないのは確かだ。
そんな調子で昨日までさして興味も、接触もなかった担任、柴田翔の事をあれよこれよと結局考えてしまう。
まぁ第一印象は別に悪くなかったんだよな。あの人―――
俺は入学式で体育館端のしかも最後尾だった事もあり、教師紹介がされていても自分の担任教諭が誰だかその時は分からずにいた。
別に担任が誰だろうと全く興味がなかった事もあり、その時点では自分の担任が男なのか女なのかすら把握していない無頓着ぶりだ。
それよりも一応、新一年生として多少なりとクラスに馴染めるか心配していた。
(俺は昔から第一印象が悪い事を自覚していたからな)
だから柴田先生をきちんと見たのは自分の教室に来た時だった。
今でこそ、うちのクラスでは考えられないが、みんな初顔合わせという事もあり教室は静かなものだった。
全員がちきんと席に付き、それぞれ周りの席の奴とぎこちない挨拶を交わす控えめなざわつきだった。