†鑑査委員制度†
先生はそこでようやく驚いた顔を一瞬見せたが、それはすぐに消え去った。
「瀬川くんがいいなら続けましょう。でもその前にこれだけは言わせて下さい」
そう言い右手の人差し指を立て、技巧がかった仕草をする。
「鑑査委員制度は、一度選ばれたら原則的に卒業するまで全うしてもらわなければなりません。担当教諭もその間、代わらないと思って下さい」
「パートナーってそうゆう事ですか・・・」
昨日の校長の言葉を思い出した。
「はい。ですからこれから卒業まで長い付き合いになりますので、瀬川くんとは本音で話し合っていきたいんです。さっきはそれで少々いき急いでしまいました。君の気持ちに配慮していなかった僕の過失です。すいません」
そう言って先生は俺に頭を下げた。
「そんな何度も謝らなくても、別に僕は気にしてません。さっきは意外な意見だったので驚いただけです」
「それならいんですが」
先生は少し安堵した顔を見せたが明らかに困った顔のままだった。
「それにその言い方じゃ、僕が嘘を言っているみたいじゃないですか?」
いつものような笑顔で対応し、微妙に形成逆転を試みる。
「強情ですね」
最後に先生が呟いた一言を俺は聞き逃さなかった。(いや、たぶんわざと聞こえるように呟いたんだろうが・・・)
あえてスルーして笑顔を保ち続ける。
「それじゃ、さっそく・・・」
そう言って柴田先生は、横の本棚から黒いファイルを一冊抜き取った。
「鑑査委員の具体的な仕事内容を説明したいと思います」
そう言いファイルを開き、中から一枚の紙を抜き取り俺によこした。
「書き方は今から説明しますが、今見ているこの紙を一週間に一枚。後、学期末の終わりに・・・」
柴田先生はまた本棚に手を伸ばし、今度はさっきよりもさらにかっちりとしたフォルムのやはり黒いファイル取り出した。
「これを年に二回書いて提出してもらいます」