†鑑査委員制度†
「その紙は、主に担任の僕しか見ませんが、ですがこっち」
そう言って先生はかっちりした方のファイルを軽く上に揚げる。
先に取り出したファイルの方はそれよりだいぶ薄く、普段自分でもよく使う。中に何十枚とポケットが付いたスタンダードな物だ。
でも先生が今手に持っているものは、どうやら中身はリング式になっていて、隙間から覗いた二つの大きな銀色のリングが黒色に映えて目立っている。
プラッチク製の黒板の部分を先生は片手で無造作に持ち上げているが、全くひしゃげていないあたりかなり強度がありそうなのも窺えた。
「これは学期末に学校に提出して、校長先生から理事長まで目を通すものです」
その言葉に少し背筋が伸びる思いだった。
「まだこちらは作る期間が先なので、詳しい説明は後日にしたいと思います。ですからまずはこちらから」
そう言って先生は今度は最初に見せた薄い方の黒いファイルを掲げた。
このファイルは先ほどの物とは違い、先生の持ち手の部分がやや床側に降り曲がる。
「こちらに入っている紙の説明からします」
既に受け取った紙に目を落とすと、太線で均等に三分割されている枠があり、上から一つ目と二つ目の枠は細かい升目で、さらに分かれていた。
最後の枠は細かい横線が引かれ、“MEMO"と書かれている。