†鑑査委員制度†


「いえ、そんな事はありませんよ。むしろ疑問に思った事は順次聞いて下さい」


そう笑顔を見せた先生に、俺は何となく後ろめたい気持ちになって目を逸らした。


「ちょうどL欄の話しが出ましたのでついでに先に説明しときます。付き合い出した生徒を書くときは赤色のペンで、別れた生徒は青色、または黒ペンで記入をお願いします」


別れても書くのか!


突っ込みたかったが流石に今の今なので頷くだけになった。


それに自慢じゃないが俺は誰と誰が付き合っている。とか、別れた。とかそういう話題は疎いし正直なところ聞くのも話すのも苦手だ。


だから元々積極的にやるつもりは毛頭ないが、ことL欄に対してはまともに書けるか自信がない。


と言うか、どの面下げて?と自分に苦笑いだ。


「ところで、今のところうちのクラスの子達は付き合いがあるんでしょうか?」


「たぶんいないかと。いや、正直よく分かりません」


「そうなんですか?時期的に一組や二組居ても可笑しくないんですがね」


そういい先生は笑みを浮かべた。さすがに先程の話は先生も気まずそうだったが、元々こうした話題は年頃の俺らと接している仕事上。柔軟な方なのだろう。


当の俺はそういうもんなんだろうか?とやはりよく分からないから何とも言えない。


「順序が違ってしまいましたが“L欄”についてはいいですか?何か他に質問があれば、さっきのようにそのつど尋ねて下さいね」


「はい」


「じゃ一番上の“報告概要”を見て下さい」


目線を再び紙に落とす。
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