†鑑査委員制度†
「報告内容は、基本的に瀬川くんの判断にお任せします。一応学校から鑑査委員の活動に関する事がまとめてあるガイダンスのような物があるので・・・持ち帰りは不可ですから見るときは僕に声をかけて下さい」
「分かりました」
「今目を通しておきますか?」
「今日のところは取りあえずいいです。この紙の事で頭がいっぱいなので」
そう言い手にしている物をヒラヒラと持ち上げた。
「それもそうですね」
柴田先生は苦笑いを浮かべると、手にしていた黒いファイルを俺に差し出した。
「これは君が管理していて下さい」
両手で受け取ると、思った以上に重量感があった。
「くれぐれも他の生徒に見つからないようお願いします。それと、それも持ち帰れないので鑑査委員の仕事は学校で済ますようにして下さい」
えっ!他の生徒に見つからないようにしなくちゃいけないのに、持って帰れないのか?
まぁ親に見つかったら不味いからという配慮なんだろうが・・・にしても、じゃいつ書くんだよ?
むちゃな要求に思わず顔をしかめてしまった。
俺の表情で察したのか、先生は短くあぁと声をあげた。
「すいません。忘れてました」
そういい、背広のポケットから大きさの違う二つの鍵を取り出した。
「鑑査委員には何というか特典のようなものがありまして、その一つがこれです」
そういい二つとも俺へとよこす。
「その細長くって大きい方の鍵はこの資料室の鍵で、小さい方はこの机の引き出しの鍵です」
・・・これがどうした?
「瀬川くんにここの鍵をあげます」
「えぇぇ!!」
ぎょっとした。
だってこれ学校の鍵だぞ!?
「スムーズに作業が出来るようにとの配慮です。あっ、私情で利用するのは控えて下さいね?」
そう言う柴田先生の顔には笑みが浮かんでいた。