†鑑査委員制度†
「今更僕が突然A特待生って無理がありませんか?お金の問題が絡みますし、両親にもどう説明したらいいか」
「そのへんは任せて下さい。何とか帳尻を合わせますから」
そう言う先生の顔は何だか確信に満ちていた。
まぁ・・・お金がかからなくなるのは有り難いが、それで本当にいいのか?
不安要素はあるが、この手の話は俺がどうこう出来る事でもないので、流れに任せることに決めた。
「それじゃ今日はここまでにしましょう。明日また、放課後ここに来て下さい。まだまだ説明しなくてはいけない事は沢山ありますからね」
「分かりました」
そうしてファイルを机の鍵がかかる引き出しにしまう指導を受け、二人で資料室を後にした。
「それじゃ僕はこれで」
昨日とは違い、お互い資料室から出ると一緒には歩き出さなかった。
頻繁に一緒にいるのを目撃されないためという配慮でもあるらしい。
先生が先に去るのを見送り、教室に鞄を置き忘れていた事に気づき明日からは持ってくるか。何て事をぼんやりと考える。
何だかんだ俺はよく順応してるよな。
そう考えると自虐的な笑みが自然と浮かんだ。
さて、俺もそろそろ行くか。
歩きだし、何気なくポケットに手を入れる。二つの大きさの違う鍵を掴むとひんやりとして気持ちがよかった。