†鑑査委員制度†
「あなたのクラスの金沢奈美について情報提供してもらえない?」
あの・・・今日ケータイをいじっていた金沢奈美か?
意外な人物の名前に困惑して眉をひそめた。
「・・・僕はまだ、協力するって言った覚えはないよ。それにしても何で金沢さん?」
金沢奈美を一言で言うなら地味。いや素朴と言うのだろうか。
友だちの久保田莉加が茶髪、化粧、校則違反の短いスカートといった風貌に対して。
金沢奈美は化粧気のないつぶらな一重瞼が印象的な和風な面立ちをしている。自身の肩幅くらいの長さに切りそろえられた黒髪は和風な顔立ちにとてもよく合っている。
授業態度だって至って真面目な部類だ。
まぁ今日はたまたまケータイをいじっている所を見つけてしまったが・・・
それを引いたとしても普段の振る舞いからみて、取り分け問題のある子には見えないが?
「もちろんただでとは言わないわ。こっちは三谷光輝の情報と・・・それと、私はあなたの知らないA組の情報をたくさん持っているわよ?」
まるでシチャネコのように含み笑って、いかが?と彼女はおどけてみせた。
「それは答えになってないなぁ。そもそも三谷・・・光輝?僕はそんな人は知らないよ」
肩をすくめて答える。
それにあまりこの件に関して乗り気じゃない俺としてはまだ知り得ない情報に対してさほど魅力を感じない。
「三谷光輝はうちのクラスの生徒よ。やっぱり何だかんだ強情ね。まどろっこしいことは嫌い何でしょう?」
「それとこれとはまた別だと思うけど。だって君は僕のことを何かと知っているようだけど、僕は何も分からないんだ。簡単には返事できないよ」
彼女はじっと俺を見つめた後、軽くため息をついて分かった。と答えた。
「そうね。こっちも説明不足だったようだし、改めて挨拶からやり直すわ」