†鑑査委員制度†
姫宮ミコトの言葉にふと校長の台詞が蘇る。
『君にクラスを統率してもらいたいのだよ』
あの時の言葉はそう言う意味だったのだろうか?
・・・まぁ何にしても柴田先生、説明不足だよな。推薦状の事もクラスをまとめるも云々、俺は今聞いた初耳の話しばかりだ。
そんな俺の事情なんて姫宮さんはもちろん知るはずもない。
俺も正直、何故今こんなにも彼女が憤慨しているのか分からないのだから。
お互い察しろってのが無理な話しだ。
「あのねぇ瀬川くんは男子だから疎いと思うけど、特に女子にははっきりとした階級ヒエラルキーが存在すんのよ!」
姫宮ミコトはなおも興奮冷めやまない様子で話すので、
「ヒエラルキーって、あのピラミッドみたいなやつだよね?」なんて、とてもじゃないが今更聞けなかった。
「いい?そうした関係性がある以上、本当の意味でクラスなんてほっといたってまとまんないのよ!」
なるほど、姫宮さんの言ってる事も分からないではないが・・・
「そうかな?もうお互い高校生なんだし、そこのところは譲歩し合えると思うけど。それにたった1年じゃないか。不都合が起きても我慢すればいい話だよ」
そう、たぶん姫宮ミコトには彼女なりの理屈がある。でもそれは俺も同じだ。
俺は苛立ち始めていた。
「そもそも女子のヒエラルキーがあるからってどうなの?そんなのそれぞれの階層で仲良くしてればいいじゃないか」
俺はうんざりとして吐き捨てるように言った。
面倒臭い。こんな事になるなら聞くんじゃなかった。
「馬鹿!そもそもそんな階層があること事態が変だって言ってんのよ!!」
どうしてここまでこじれたんだか・・・?
いつもなら簡単に折れて謝れるのに、今さっき初めて言葉を交わした女にいきなり馬鹿とまで言われては、さすがの俺も他人に気をつかう寛容さでは無い。
口を開くと怒鳴りつけるのは目に見えたので黙っていると、姫宮ミコトは目を剥いて何かまた口を開きかけた。
「あんたねぇ・・・」
「ミコト」
お互い引くに引けず、どうにも収拾がつきそうにない。そう思っていた矢先、突如として割り込んできた見知らぬ声に飛び上がるほど驚いた。とっさに声の主に目を向けた。