†鑑査委員制度†


姫宮ミコトを通り越した目線の先には、教室の後ろ扉に背中を預け、腕組みをする男子生徒の姿があった。


顔に標準を合わせた俺は息を呑む。


何だ?こいつ?・・・男?


下手をするとここにいる姫宮ミコトより綺麗なんじゃないかと思うほど、常人ばなれした華やかな面持ちの少年だった。


だが髪型が少々奇抜・・・いや、個性的だ。


右耳は何も掛かるものが無いほど、ほとんどボーズに近い短髪に対し、顔面左側に向かうにつれてどんどん毛量が増している。


顔を真っ正面から捉えた時に、右と左のアンバランス差に違和感を覚えた。


「ミコト、熱くなりすぎ」


声は見た目の印象より遥かに低く、そして温度を感じさせない声音が響いた。


「椿、来ないんじゃなかったの?」


「仕事が終わって覗きに来たんだ。お前の声、廊下にまで響いてたぜ?」


そう言って椿と呼ばれる少年は綺麗に整った眉を歪め、喉を鳴らすように笑った。


「うるさい!相変わらず変な髪型して!」


「心外だなー、アシメだよ」


まったく抑揚のない声で姫宮ミコトにそう答えると、ふと俺に視線を寄越した。


「君がA組の鑑査員くん?」


突然話しかけられどきりとしたが、すぐに答えた。


「あぁそうだよ。君もなのかな?」


俺の問いには微笑みを浮かべただけだった。了解のサインととっていいのだろうか?


「うちのミコトがお騒がせしたね。悪いことしたよ。の子ちょっと血の気が多くって」さ


「なーにが『うちのミコト』よ!悪かったわね!血の気が多くって!!」


ほらまたそう熱くなる。そう言って椿少年は再び喉を鳴らした。そして俺達へと歩み寄る。
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