†鑑査委員制度†
椿と呼ばれた少年は、俺の目の前まで来ると手を差し伸べてきた。どうやら握手を求められている。
戸惑いがちに俺も握ると、思いの他強く握られた。
「D組の椿千里。もちろん君と同じ鑑査委員だよ」
近くで見ると、その細部まで整った顔には一種、迫力があった。
どうでもいいが、椿って名字だったのか。名前かと思ってた・・・
「A組の瀬川透です。鑑査委員同士の接触は禁止って言われていたもので、いんですかね?こんなにほいほい会って?」
笑顔を向けると、椿千里は手を離しながらきょとんとした顔をした。そして横で不機嫌そうに頬を膨らましている姫宮ミコトに不思議そうに尋ねる。
「何?この瀬川くんの頑なさ?」
「昨日鑑査委員になったばかりだそうよ!」
姫宮ミコトは答えると、プイと横を向いてしまった。
それを聞いた椿千里は驚愕を顔に浮かべる。
「はっ?何、それ?有り得ないっしょ、どういうこと?」
「だからそのまんまの意味!こいつは何も知らないのよ!!」
ムッ。
姫宮さんのこいつ呼ばりには苛立つ。
俺だってこんな状況は嫌だよ!
「おい、ミコト。止めろよなーお前そう言うの。瀬川くんごめんねー」
姫宮ミコトのかわりに何故か椿千里が俺に謝る。もしかしたらこういう状況に馴れているのかもしれない。
「でも成る程ね、それなら納得じゃん。なぁミコト?」
当然姫宮ミコトは答えない。椿千里もそれは分かっているのか俺に話し掛ける体になった。
「何故かずっと、A組の鑑査委員が誰か探り入れてたんだけど分からなくてね。まぁー決まってないのに探り入れてもしょうがなかった訳だ」
そう言って椿千里は可笑しそうにケラケラと笑った。