†鑑査委員制度†
「あのねぇ」
それまで黙っていた姫宮ミコトは声をあげた。
明らかに苛立ちを隠しきれていない声音だ。
「だから最初から言ってるじゃない!私は無報酬でとは言っていない!」
その一括に椿千里は大袈裟にのけぞった。
「別に僕は損得があって、もったいつけてるわけじゃないよ」
静かにそう言うと、それに反発するように噛みつかれる。
「じゃ何だっていうのよ!」
「本人の了解がないところで、かってに情報を明け渡すのはどうかと思っただけだよ。それでも、それを求めるならこちらがなっとくがいく説明が必要だよ」
うっすらと笑うと、姫宮ミコトは口を尖らせ吐き捨てた。
「こっちが説明してやってんのに、あんたがさっき真っ向からぶった切ったんじゃない」
・・・??
さっきって、あの言い争いにまで発展した、姫宮さんのモットーだかの話しの事か?
どうやらあれは事情の説明も含めていたらしかった。
それなら俺にも落ち度がある。先ほどはつい売り言葉に買い言葉になってしまったが、彼女がもし順を追って説明をする気だったのなら悪い事をした。
今は素直にそう思える。
「あの時、説明しようとしてくれてたんだ。それじゃ僕、悪いことしたね。気づいていなかったよ。ごめんね、今度は最後まで聞くからもう一度お願いしてもいいかな?」
俺としては言葉の尽くせる限り、彼女を酌量したつもりだ。
姫宮ミコトは俺をギロリと睨みあげたが、それ以上は何も言わなかった。
今度こそ、きちんと説明する体に入ったところで、椿千里が突然声をあげた。
「あのさ。ここじゃ何じゃない?俺かミコトの仕事部屋に行こうぜ」
姫宮ミコトは少し考えてから、それに了解した。
「じゃここから一番近い、私の所にしましょう。瀬川くん。移動するけどいいかしら?」
俺は了解して、三人で教室を出ることにした。