†鑑査委員制度†
姫宮さんを先頭に、少し離れた位置から俺と椿くんは並んで歩いていた。
すると椿くんは俺にさり気なく耳打ちする。
「俺も入って来たとき、ちょっとしか聞こえなかったけど・・・さっきはミコトとL欄について揉めてたでしょ?」
俺はばつが悪い顔になりながら頷いた。
「まぁだいたいどういう経緯か想像できるけどねぇ。俺も正直、あいつの考え方よく分かんねぇし」
と言いつつ、顔には笑みが浮かんでいる。
俺からすればお前こそよく分からない奴だよ。
口には出さず、そう突っ込みを入れたタイミングで、再び耳打ちをされる。
「でもさぁ、あいつの気持ちは分かるんだよ」
急に椿くんは前を歩く姫宮さんを目を細めて見つめた。
見方によっては労るようにも見えるが、やはり抑揚のない声音から、椿くんの本当のところは推し量れない。
「あいつ、あの顔だろ?それなのにあぁも性格きっついからさ」
そう言って俺に笑いかけながら、色々苦労してると思うぜ?と、例の喉を鳴らす笑いをした。
顔が整っているなまじ、その仕草は妙に妖艶な女悪役を思わせる。(まぁ男なんだが・・・)
「何二人で内緒話してるのよ?」
気がつくと姫宮さんが睨みつけていた。
「別に〜?」
椿千里はニヤニヤ顔だ。
姫宮ミコトはフンと鼻を鳴らすと、さっさと歩く速度を速めた。
俺はというと、姫宮ミコトの印象の上書きをしていた。
もっと冷静な人物かと思えば意外にも直情型。
それに見た目のインパクトからついた女王様という印象は、どうやらこのまま定着させてよさそうだ。
一人で納得していると、横で椿くんはやれやれと呟き、俺たちも急ごうか?と二人で歩みを速めた。