†鑑査委員制度†
姫宮ミコトは“PC室"と書かれたプレートの下で足を止めた。
しかしそこは俺が普段知っているPC室ではない。
確か、去年あたりに今でている中で最も最新の薄型パソコンを購入、総入れ替えをしたという話しだ。
だからここは旧・PC室ということになるのだろう。
姫宮ミコトは何の説明無しにポケットから鍵を取り出し、鍵穴に差し入れた。
カチャリという音と共に、開いた室内はやはり旧型のボックス型パソコンが、所狭しと置かれてあった。
姫宮ミコトは先に入室し、俺達が入ってきた時にはすでに適当に揃えた椅子が三つ。輪を作るように配置され、彼女は右端の椅子に腰を下ろしていた。
「どうぞ?」
促されるままに座り、ちょうど俺と姫宮さんが直接向かい合う形で、椿くんがその間という位置でひとまず落ち着いた。
「全く、とんだ手間がかかる事だわ」
プリプリした様子でそう言い放ったが、説明はすでに始まったらしい。
「あなたがまだ鑑査制度について不慣れのようだから、説明がてら一から話すわよ」
「そうしてもらえると有り難いよ」
笑顔を作ると、彼女も初め見せたあの挑戦的な笑みを浮かべた。
「途中で切らないでよ?むかつくから」
その台詞に流石に面食らう。横から椿くんに諭されていたが、彼女は異にも返さない様子だ。
「金沢奈美についてだけど、私は彼女がうちのクラスの三谷光輝と付き合っているかどうか知りたいの」
「それは、やっぱり鑑査委員として?」
切るなとは言われたが、質問ぐらいは言いだろう。
「もちろんよ。L欄に書くべきかどうか、きちんとした事実確認をしなくてはならないし・・・でも瀬川くんは確か、三谷の事、知らないのよね?」
「あぁ知らない。申し訳ないけど」
何なら今日、初めて知ったぐらいだ。それに・・・やっぱり俺は納得できない。
「・・・やっぱり僕は、L欄という項目自体に疑問を持っているんだ。本当に書くべきこと何だろうかとね」
もしかしたらまた、怒らせるかもしれないと思ったが言った。
ここは俺も譲れないところだ。