†鑑査委員制度†
柴田がそれだけ言い切ると、俺たちの間にはしばらく気まずい沈黙が落ちた。
どうやら校長のように取り繕う気はないらしいが、このままずっと黙っていたままでも上手くないだろう。
色々思う事はあったが、取りあえず俺から一番疑問に思った事を口にしてみる。
「あの、いんでしょうか?学校がこんな人権問題が絡みそうな事をやっても?」
「よくは、ないでしょうね」
柴田は間髪入れずにはっきりと言い切った。顔に悔しそうな、やるせなさそうな複雑な感情が窺える。
俺は少し拍子抜けした。
「でわ、なぜこんな制度が?」
俺は教室に戻るまでの短い間に自分なりに色々と整理して、自分が選ばれてしまったらしい鑑査委員制度というもの。そしてその話しを持ってきた担任の柴田に対して少なからず反発心を抱いていていた。
しかし先程からの柴田の反応を見るに、どうやら仕方なしに。といった何か事情があるらしい。それは察せられた。
そこで俺の反発心は一気に萎えてしまった。逆に自分がどうでるべきか途端に判断に困まる。
柴田も相変わらず難しい表情を浮かべたままだ。
「学校には校則がありますね?」
一言一言慎重に探るように話し出した柴田に、取りあえず俺は黙って耳を傾ける。
「ほら、制服はきちんと着なさい。とか、髪を染めるな。とか」
「分かります」
先生は苦笑いを俺に向けた。
「それと同じなんです。鑑査委員制度というものは、まぁ一般生徒には非公開ですが、我が校の校則なんです。校則な以上守らないといけない」
だから何でそんな物があるのかと言うのは、考えてもどうにもなりません。
最後にそう付け加えた後、柴田は困ったように小さく笑った。