†鑑査委員制度†
「お腹、へったんですけど・・・」
はっ?
「はぁー!?」
唖然とする俺たちに椿千里は不平不満を漏らす。
「だって時計見ろよ。もう7時を回るぜ?俺もう帰りたい」
「あんた一人で勝手に帰れば!」
憤慨とした表情で姫宮ミコトは怒鳴る。
「いやー流石にミコトと透くんを置いて帰れないし。もう何でもいいからさっさと話し済ませてよ」
涼しい顔でそう飄々と語る椿くんの口振りに、今日一番の度肝を抜かれる。
このタイミングで姫宮さんを怒らすか普通?
「椿・・・!」
案の定。彼女の眉は恐ろしいほどつり上がる。
するとふと椿くんは俺に視線を寄越した。
「透くんも協力するもしないも、今日はもうこんな時間だし嫌だろ?」
付き合う俺も嫌だよ。そう呟き、再び姫宮ミコトに視線を戻す。
「どーせお前の調書に透くんを付き合わせるんだろう?明日でいいじゃん。今日はもう帰ろうぜ」
その言葉に姫宮さんは再び口を開きかけたが、結局押し黙り、椿くんから俺に目線を移した。
「いいかしら?」
それは明日もこれに付き合えって事で、暗にもう協力する前提になっているが・・・
流石に今、この雰囲気をさらに悪化させる勇気は俺にはない。
苦笑いと一緒に一度頷く。
まぁ姫宮さんの考えはある程度分かったし、金沢さんの事を話してもあまり問題なさそうだが・・・
何より面倒だ。
「よし、じゃ帰ろうぜ」
俺の了解を確認して、椿くんは椅子から立ち上がった。
3人で外へ出る。
7月の空は、19時を回っても、まだ辛うじて明るい。