†鑑査委員制度†
「どっか寄ってこうぜ、俺もう限界」
姫宮さんがスタバがいいと主張して、椿くんは俺にどこがいい?と問いかける。
そこに密かに驚いた。
俺も頭数に入れられていたのか・・・
「ごめん。僕、電車の時間があるから」
そう断ると、二人は珍しい物を見る目になった。
「へぇ透くんって地方生だったんだ?」
「珍しいわね」
日下辺高校は地元密着型の私立校だ。
だから俺みたいに電車やバスを乗り継いで通ってくる、地方生と呼ばれる生徒は地の利もあって少ない。
分かっている。ただ二人は純粋に珍しいだけだ。
そこに悪意は何も含まれていない事は知っていた。
でもダメだった。頬の表面が引きつる。
俺は今、きちんと笑えているだろうか?
「じゃ時間も迫っているし、僕はもう行くね」
校門を出てすぐに、足早に駅へと向かう。
椿くんと姫宮さんの顔を最後まで確認しなかった。
駅へ着き、電車を待っている間、鞄からiPodを取り出す。
これでもだいぶ回復してきている。
そう考えたところで、いつも囚われる、あのざわざわとした気持ちが胸を覆った。
俺はどうしたい?
そしていつもの結論へとたどり着くのだ。
――2番線二、電車ガ、参リマス・・・・・・
無機質なアナウンスと共に、遠くでサイレントの音が聞こえた。