†鑑査委員制度†
激動の2日目
家に着いたのは、夜の8時を回った頃合いだった。
室内から灯りが洩れていたので、お手伝いさんがまだ帰っていないのだろうか?と首を傾げながら玄関を開ける。
「ただいま」
俺の声を聞きつけて、パタパタとスリッパで駆けてくる音が聞こえてくる。
右手のリビングへ続く扉が開き、顔を覗かせたのは意外なことに母だった。
「お帰り透、遅かったのね」
「母さん!戻って来てたの?」
まさか母が帰宅しているとは思わず初めは驚いたが、突然帰宅してくることは思い直せばよくある事だった。
「えぇ明日にはまた出発するけどね。そういえば透、今日ね、あなたの所の学校の先生が3人程見えられたんだけど・・・」
「えっ・・・!」
何だって!?
もちろん心当たりがあるのは“鑑査委員制度”がらみだが・・・奴ら何しに来たんだ?
「・・・なんで?」
訪ねてきた意図を図りかねて、自然と口調は探る体になった。
「そもそもね!あんた何で黙ってたの!?」
もしや、親にバラしたのか!?
「特待生とれるなんて透、あんた頭良かったのね!さすが私の息子だわ」
そうして母さんは俺にぎゅっとしがみついた。
はっ・・・?
「今日は謝られにみえたのよ。何かの手違いで透がA特待生漏れしたとかで・・・土下座する勢いで謝られたから、むしろこっちの方が萎縮しちゃた。しかも今までの分も払い戻ししますって」
あぁ何だそういう事?って、それも十分事か?
何だかここ最近急な取り決めが多くて、めったな事じゃ驚けなくなってきている気がする。馴れって怖ぇな。
母さんに抱きつかれながら、思わず遠い目になった。
「そう言えば父さんは・・・一緒に帰ってきたの?」
母さんはそこで俺をようやく離し、首を横に振った。
「重治さんは今九州よ。私も明日には合流するの。福岡よ福岡!」
母さんは声を弾ませて楽しそうにきゃっきゃと声をあげた。
俺は母さんのそんな様子を眺めながら、父さんが今、ひとまず家にいない事にほっと胸をなで下ろした。
そうか、今回は九州か。