†鑑査委員制度†
翌朝の目覚めは最悪だった。昨日は母との一件の後、誘われるがままに地元の友人と飲んで、帰って来たのは結局午前4時を回った頃だ。しかも俺が学校に行くには、6時には起きなくてはならない。
あぁだるい。自業自得だが、一体何やってるんだろ俺?もうそういった事は止めると決めていたのに・・・しかも昨日は場に流されて女の子にまで手を出していた気がする。
曖昧な記憶と馬鹿な自分に自己嫌悪に陥った。
10分ぐらいうだうだと布団の中で唸ってから、ようやく起き上がる。
量としてはそこまで飲んでいないはずだから、臭いの方は大丈夫だと思うが、酷く汗をかいていた。
シャワーを浴びようとバスタブへ向かう途中、ふと、人の気配に気がつき足を止めた。
まさか母さんがまだいるのだろうか?だとしたら少し面倒だな・・・
一瞬煩わしい考えが掠めたが、そこまで深く考えずに食堂の前を通りすぎる。すると突然スモークガラスの扉が開いた。
「あら、透さん!おはようございます!!」
チャキチャキとそのよく通る声にギョッとする。
何でこんな時間に?
「東城さん」
驚いて固まる俺に、東城さんは黄色い声をあげた。
「まぁー!!透さん!しばらく見ないうちにまた男前を上げて!」
そう言って俺の周りをくるくると旋回する。
俺は相変わらずだなと、苦笑いを浮かべる。
「何で東城さんがいるの?今日は早いね」
「それがですね!本日から住み込みで働く事になったんですよ」
東城初子は歯切れのよい受け答えでニコニコと笑っている。
はっ!?
俺は怪訝な表情で、まさかの発言に尋ねる。
「えっ?東城さん。自分の家はどうすんの?」
東城さんには確か子どもはいないはずだが、それでも会った事はないが、夫はまだ健在だと聞く。自分の家庭の事もあるだろう?
「大丈夫です!夫はもう入院生活が長いので、家は初子1人なんですよ。奥様に、昼間の時間は自由に使って良いと言われているので、全然問題ありません」
俺の懸念した部分を、東城さんはずばり解答する。そして成る程、どうやらこの事態は母さんの差し金というわけか。