†鑑査委員制度†
アルコールで意識まで飛ばした事は今まで一度もなかった。
この日もビール1缶程度で、しかもキョウジさんの飲みかけだから実質缶の半分程度しか飲んでいないはずだったし・・・
それにいくら弱いとは言っても、さすがにそれぐらいでダウンするなんてありえないことだ。まして記憶を飛ばすなどとは!
しかしどういうわけか、昨日の記憶は依然酷く断片的なままだった。
所々で隣で俺を触ってくる女と、軽はずみな行動に出たのはまぁ何となく覚えているんだけど・・・
全く、忌々しい。あの時の自分はどうかしていた。
でも、朝自分のベッドで寝ていたってことは一線を越えてないってことだと思うのだが・・・と、それ以上思い出したくなくて俺は顔をとっさに覆った。
「はぁ」
盛大にため息を一つ。
いや、俺が悪い。全面的に俺が悪かったけれども!
無意味に何かに弁解してみた。
ふいと顔をあげると、もうすぐそこは日下辺高校の校門前だ。
毎朝の事なので、周りの生徒の面々も見覚えのある奴ばかりになってくる。
ここは、自分が選んで通っている高校だ。
そして昨日のキョウジさんの家も、結局は自分が意志を持って行った。そこでの結果はやはり自分の選択が招いた副産物に過ぎない。
もちろん反省はしなくてはならないし、色々な葛藤もある。しかし自分の責任だ。甘んじて受ける。でも後悔だけはしたくない。
これはもう俺の意地なんだ。
昨日の案件とは別に、透はまた違った自分の問題を思い一瞬表情を堅くした。
「はぁ」
もう一度だけため息をつき、それから校門をくぐった。