†鑑査委員制度†
「瀬川くんの主張は分かります。僕もまだほんの数年前は一応学生でしたからね。何と言うんですかね?学校という狭い空間は、独自のネットワークや秩序が子どもたちの間にあるものですし、それも承知しているつもりでいます」
「まぁ・・・そうですね」
否定はしない。それに俺に限らず、みんなどこか他人には無関心なんだ。
そしてそれは時に猟奇的で残酷なほど。
自分たちが、歪んだルールを作ったとしても、それを正義としてけして疑わないし、その事に誰も声に出して異を唱えない。
普段無関心を装っているくせに、そうした時の結束力や影響力は馬鹿にならない事が多い。
いや、無関心だから。人の事は言えないが、他人の心が見えていないからこそ非道になるのかもしれない・・・
例え、どんなにえげつなかろうと、学校でほぼ毎日会うという面々は、一度固まった自分たちの毎ルールを信仰と呼べるほど簡単には揺るがせない。
だからこそ、その中での自分の立ち位置は大切で、弾かれるような事は絶対にあってはならない。
柴田は頷いた。
「その筆頭にまず浮かぶのが、まさに教員への言い付けなんでしょうが・・・。」
そうだな、分かってるじゃないか。それでも俺に拒否権がある案件なのか、これは?
それにしても先生には驚かされる。さっきから会話の節々に感じていたが・・・
柴田は生徒の俺に対しても敬語で話すほど物腰が柔らかい奴だが、でもその内容はあまりにも開けっぴろげだ。
そしておそらく鑑査委員制度に対して本音は快く思っていないというのが伝わってくる。
ただ、彼は教師という立場と日下辺高校の校則という制限もあり、ギリギリ直接的な言い方は避けているのだろう。
やっぱりそこは所詮教師と言えど企業のサラリーマンと変わらないし、組織に属している以上仕方のない事なのかもしれない。
だからそれを含めて柴田・・・柴田先生は俺は見所がある奴だと思った。少なくてもあのカエル面の校長よりは信用が置ける。そう思ったからもっと弁を張ってもいいと思えたのかもしれない。