†鑑査委員制度†
この期に及んでどういう事だ?
困惑する俺をよそに先生は再度解答を促す。
「どうですか?」
そして改めて考えてみる。すると何を密告する事があるのだろう?というのがまず最初に頭に浮かんだのだ。
俺たちの日常は、漫画やテレビ何かとはもちろん全然違う。みんながみんな、何か特別能力もなければ、正義の味方もそれと対立するあからさまな悪も存在しない。
実際問題として自分たちが考えているほど、劇的な何かなんてまず起こらないんじゃないか?毎日暇と退屈を持て余している学生が殆どだろう。
そんな至ってシンプルに生きる俺たちの悪の粗相なんて限られているものだ。しかもこれも悪戯に入るのからどうか、俺の中では問題意識が低い。
「思うに、例えば飲酒をしているとか煙草を吸っているとか。そういう行為ですか?」
飲酒や煙草。せいぜい粋がれるのはそのぐらいに思える。
「確かにそうした事も一応報告の対象になってはいますが・・・僕個人の意見としては、君達の歳で全く興味がないって事はないと思いますし、常習犯でもない限り別に騒ぎ立てる必要もないと思います。他には何か思いつきますか?」
「いえ」
それはそれで教師としていいのか?と内心首を傾げたが、俺もその考え方には同感だ。
そしてそれ以上本当に思いつかなかったので正直に答えた。
何だか考えれば考えるほど拍子抜けだ。
そうだ、突然校長室に呼ばれ、この大層な名前の制度に俺は完全に気後れを起こしていた。そして十分な説明がされなかった分、余計にマイナスに捉えすぎていたのかもしれない。
チクリとは言っても俺たちのする事なんて結局たかがしれているじゃないか。
そう思うと途端に気持ちに余裕ができ、自分がこれまで冷静になりきれていなかった事に気づかされた。