†鑑査委員制度†
思惑と想い
瀬川透を見送って早々、私は椿から説教を食らっていた。
「全くさ、何がそんなに気にいんないわけ?目に余るよお前のその発言と態度」
そんな事言われなくても、自分でも分かっているわよ。
椿の方が圧倒的に正論だとは思うけれど、つい唇を尖らせてしまう。
「だって・・・」
「だっては無し。自分でも分かってるんだろ?俺もさすがにフォローしきれねぇよ」
「別にフォローしてだなんて頼んでないじゃない」
しまった、また可愛くないことを言ってしまった。
いつだって自分はそうだ。心に思ってもいないことを言っては相手にきつく当たってしまう。その時は反省しても結局また繰り返してしまう。
そんな自分自身が腹立たしくて、思わず眉間にしわが寄る。そしてまた二重の後悔を自分はするはめになる。
この眉間のシワはあなたに対して怒っているわけじゃなくて、自分の無粋さに参ってしまっているだけなのよ。だからどうか誤解しないで欲しい。
と思うのはミコトの勝手で、姫宮ミコトはそれは自分のエゴだと理解していても、分かった上でなお椿にそう心の中で求める。
求めてしまう。
当の椿は分かっているのかいないのか、さっきのミコトの発言は一切流し、短い説教はもう別の話題へと移った。
「それで、本当に大丈夫なんだな?」
椿のこういうところがありがたい。
ミコトもすぐに切り替えて応じる。
「えぇ。椿も瀬川くんが来た時、津田先生に見られなかったんでしょ?」
「あぁ、津田ちゃんタッチの差だったけど、出て行った後だったから」
椿の言う津田とは、50代半場を過ぎた少し太りぎみのD組の担任教諭の事だ。
ちなみに頭髪が申し訳程度しかなく・・・と言うかぶっちゃけハゲているため生徒に陰でハゲだるまと揶揄される教師である。
「今から行くけど・・・メールじゃたぶん平気だろうって、一応確認しておくそうよ」
「おー、しかしあの人は一体いつく切り札を持っているんだが…」
気のない返事を装って、一瞬椿が息を詰めたように感じて思わず彼を見上げたが、どうやら自分の勘違いらしい。
椿は私が買ってきたグアバ味のコーヒー牛乳を飲んでみたらしく、酷く顔をしかめていた。
買うときに如何にも不味そうだとわと思っていたけど、やっぱり不味いのかしら?
衝撃的な味のあまり、思わず声が詰まってしまったのね。