チョコレートフォンデュ
「今日はパスタが食べたいな。クリームパスタな気分。」

早く車を走らせてという思いを伝えたつもりが、見事に伝わらず、杏の部屋に行きたい。と言われてしまった。一人暮らしだけど、自分の部屋に一切男を入れない主義なのだ。
だって、自分の部屋に帰ってきて一人になった時、男の痕跡なんかを見つけてイチイチ思い出したくないから。本気で好きな人だけ、いつかできた時にはきっと部屋へ呼んで手料理なんかを振舞う。全部妄想だけど。

「今日は部屋が散らかってるからダメだよ。また今度にして?」

今度なんかないのにそんな事を言ってしまう。豊が納得するわけないのに。

「昨日りぃに別れ話切り出した。」

りぃは私の元友達で豊の彼女。私の行っていた短大に今も通っている。私は心の中で大きなため息をついた。めんどくせぇなんて思いながら。


「りぃとは高校からの付き合いじゃないの?私達の関係は割り切ってる関係でしょ?私も豊も。私は本気にはなれないよ・・。」

最初に豊に会ったのはカラオケボックスだった。私達がカラオケをしている所に、りぃが彼氏を呼びたいと言い出し、豊が友達も連れてやってきた。紹介された瞬間から、豊の視線が気になった。私はその時豊が連れてきた友達とその後何回か食事に行ったが、お互いなんだか合わずに、友達にすらならなかった。すると彼と音信普通になった一ヶ月後くらいに知らない番号から電話があり、それが豊だった。豊が言う前に、誰が私の番号を教えたかは明白だった。それからは毎日の様に電話があり、私は毎日の様に同じ事を言っていた。りぃに悪いからもう電話してこないでって。
< 3 / 65 >

この作品をシェア

pagetop