チョコレートフォンデュ
家の前まで来ると、

「目冷やしな」

と豊は笑って言った。

頷く事しかできない私は、静かに車を降り、豊のまたねって言葉にも、ただ頷いていた。

豊の車が走り出したのは、私がマンションの入り口に入り、見えなくなってからだった。






その日の夜、電話が鳴った。

私は帰ってきた時のままの姿で、重い腰をソファから起こし、バックに手を伸ばした。

携帯に表示された名前を見て驚いた。

久々に写ったその文字は、私の動きを一瞬止めた。

恐る恐る通話ボタンを押し、携帯を耳に当てると、懐かしいような、でも少し胸が痛むような、そんな声が聞こえてきた。

「杏・・・」


「・・・りぃ・・・」


「豊にふられちゃったよ・・・」

りぃは、私達の間に何事もなかったかの様に言った。

まるで、短大の時と変わらない。

今までずっとりぃの恋愛相談を受けていた様に、りぃは普通に言った。

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