チョコレートフォンデュ
電話を切った私は、冷たくなった体を温めたくて、お湯を沸かし、冷蔵庫の上のティーパックに手を伸ばした。

レモンの絵が描かれた黄色い箱を見つめ、思わずため息を漏らした。

薬缶の先から勢い良く湯気が噴出し、なにかの叫び声みたいな強烈な音を立てるまで、私はキッチンで突っ立っていた。

もうお湯が沸いたのかと思うくらい、数秒しか経っていない気がしたのは、頭の中が・・・というよりも、自分の気持ちが整理できないで居たからだろう。


お気に入りのピンクのマグカップは、今朝洗って放置したまま、他の食器と紛れていた。

お湯が注がれたマグカップは一気に熱を持ち、私は袖を引っ張ってその熱いカップを持ち、またソファに戻った。

今日できた舌の火傷はもう気にならなかったが、私はマグカップをガラスのテーブルに置いて、ソファに深く体を沈め、湯気を見つめていた。

ふと時計に目をやると、時計の長針は11時過ぎを指していた。

秒針の音が静かな部屋に響いているのが耳障りに感じ、テレビをつけた。

今はとても笑える気分ではないのに、付けたチャンネルはお笑い番組がやっていて、それは今朝見ていた情報番組と同じチャンネルだった事に気づいた。

みんなが楽しそうに笑っているのを見て、テレビの向こう側との距離をいつもより遠くに感じていた。


< 46 / 65 >

この作品をシェア

pagetop