チョコレートフォンデュ
内容は全くと言っていい程入ってこず、思い浮かぶのはりぃと豊の事だった。

活字を追いながら二人の事を考える事に疲れ、とうとう開いたばっかりの本を閉じた。


目を閉じベンチの背もたれに寄りかかると、りぃの言葉を何度も頭の中で反復した。

「豊が好き」


りぃは、言った。


「お金目的で豊と付き合ってたわけじゃないの。本気で豊が好き。」

りぃが口にしなかったその後の言葉は、きっと、

「豊とは終わりにして欲しい」

だと思った。




りぃがなぜ援交なんかしてたか。

それは、豊を好きな事がきっかけだった。

そして、それはほんの些細な出来心だったと、りぃは言った。

つくづく、ユリという女は悪女だと思った。

あのおやじとりぃが出逢ったきっかけは、ユリだった。

あのカラオケに豊が来た日。

そして私が豊に出逢った日、ユリもその場に居た。

私は、ユリが嘘をついている事をすぐに見抜いた。

だって、豊がそんな事を理由に女を選ぶとは思えなかったから。


カラオケにみんなで行った日の夜、ユリはりぃに電話でこう言ったという。

「豊くんがね、ちらっと私に言ってきたんだけどね、豊くん、お金持ってない女の子は嫌なんだって。なんか、お金目的で近づいてくる女の子が居るから、相手が普通の子だと、どうしても信じられないらしいよ。りぃに言うか迷ったんだけど、りぃもお金目的だって豊くんは思ってて、お金を持ってる女の子しか、信用できないんだって。」

確かに豊は、りぃがお金目的だと思っていた。

でも、それはお金を持ってる持っていない関係のない事だった。

豊は、きっと本当に豊を好きな子なら、そのままの彼女を受け止めるだろう。でも、きっと豊は、りぃが豊よりもお金に恋している所を見てしまったのではないか・・と私は思った。

それに、豊はそんな事初めて会った女の子に言うような奴ではない。

仲の良い友達には愚痴るかもしれないが・・・。



< 48 / 65 >

この作品をシェア

pagetop