チョコレートフォンデュ
りぃは言った。

「豊の携帯、杏の名前がいっぱいあったの。一瞬しか見てないけど、あの番号は杏の番号だったと思う。」

どう答えれば良いか分からなかった。そうだよ。豊私の番号持ってて、毎日の様に電話がかかってくるんだって言ったら、りぃは傷付く。そんなの分かりきっている。なにか言わなきゃいけないのに何も言葉が見つからない。

咄嗟に嘘なんてつけなかった。

「やっぱり杏なんだね。連絡取ってるんだ?なんで?」


私の返答を待たずにりぃは聞いてきた。
きっと沈黙はYesを意味してしまったんだろう。
そうだよ。それ、私の番号だよって。

正直に話そうって思った。りぃとは短大で一番最初に仲良くなった子で、短大での親友だと思ってたから。

事情を話し、番号を変えるねって最後に付け足したら、


「バカにしないでっ」

って、テンションは変わらないまま低い声で言われて、私とりぃの間を取り次いでいた電話は一方的に切られた。
< 5 / 65 >

この作品をシェア

pagetop