【blue】
夕方、店を出たら携帯が鳴った。

広瀬さんだ。

「もしもし?那智ちゃん」

「はい…」

「もうすぐ着くけど」

「はい…あっ、見えました。そっち行きます」

横断歩道の向こう側に、広瀬さんの姿が見えた。

あたしは手を振って駆け寄る。

広瀬さんはニッコリする。

「じゃ、行こうか」

広瀬さんはスタスタと歩く。

あたしは、思わず広瀬さんのスーツの裾を掴みそうになった。

広瀬さんは、後ろを振り返って

「あっ、ごめん。歩くの早すぎた?」

と聞いた。

「いえ、いえ、あたしが遅いんです」
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