好きにならなきゃよかった





俺は
なぜか菅野さんを
抱きしめた

「…北野…?」






泣いている菅野さんを
包みこみたくなった



「北野…やめ…っふ…」



こらえないで
泣けよ


いっぱい泣いて
すっきりしろ



「……っ…ちょっと…借りる…ね」


菅野さんは
俺の腕の中で
泣いていた








体育館のむせかえるような
暑さの中

涼しい風が
吹いた






この時から
彼女の存在は
大きくなっていった










―――――15歳の夏。


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