思い出のなかに




数ヶ月前、夏の終わりごろ。






夏カゼを引いて(バカって言うな)、この病院に来た。



診察も終わって、あとは帰るだけだった。




外に出ると、お母さんが『何か、自動販売機で飲み物買ってくるね。』と言って行ってしまったので、私は、仕方なくベンチに座った。



暇だなー・・・と、軽く上を向いて、何気無く、病院の一つの窓を見た。




「(・・・あ・・・?・・・・患者さんが居る・・・・)」



別段珍しくもないけれど、私はじっ、と、その患者さんを見てみた。


横を向いていてよく見えないけれど、男の子だってことは何か分かった。



じっ・・・・と見つめていると、視線に気付いたのか、それとも偶然か、その子が私の方を向いた。


「!!」



いきなりの事で、少しドキッとした。


・・・・歳も、私と同じくらい・・・?



するとその子は、私に向かって、ニコ・・・という感じで微笑んだ・・・気がする。


「!・・・・////」


思わず私も笑い返したが、多分、引きつっていたことだろう。


しかし、私の笑み?が消えても、その子は じっ・・・と、私を見続けている感じがする。

私も顔が火照る気がするのを押さえ、瞳を合わす。


が・・・

『ごめん、待ったぁ?』と、お母さんが帰ってきてしまった。

いつもは「早くしてよ」とか思うのに、今回は「・・・もう少し、遅くても良かったのに。」と思ってしまった。


しぶしぶ帰ることにしたが、最後に ちらっとその子を見ると、その子は、未だ私を見ていた・・・・気がする。




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