コンビニ王子
自転車をアパートの駐輪場に入れると、後からバイクの音がして停まる。
後を振り返ると、男の人がヘルメットを脱いだ。

「あれ?」

王子だ。私を見るとにっこりして近付いて来た。


「ああ、良かったまだ着いたばかりだね。驚かせてごめん。」


まあるい目をしている私を見て、笑う。


「え?さっきコンビニにいたのに。」


私はまだ、なんだか事情がわからない。


「うん、あれから仕事終わったんだ。実は俺、このアパートに住んでるんだ。君の事たまに見かけるけど、いつも忙しそうに部屋へ入ってしまうから。」


王子は照れくさそうにそう言うと、しゃがんだ。


「お菓子買ってもらったんだ。良かったね。」


そして息子の頭を撫でた。


「うん、お兄ちゃんはお菓子買ってもらったの?」


私はおかしくて、つい吹き出してしまった。彼も一緒に吹き出した。


「お兄ちゃんはねえ、一人暮らしだから誰も買ってくれないんだよ。」

笑いながらそう言った。




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