コンビニ王子
私は、彼女の顔をじっとみた。

「あの、あなたは父さんの友達なの?」


彼女は少しためらったような顔をしたが、やがて口を開いた。


「私は、あなたのお父さんの会社のそばでお弁当を作っているの。お父さんには色々助けて頂いたり、相談にのってもらったりとてもお世話になったの。」


とてもお世話に?ふーん…。私は彼女の顔をまじ見した。はっきり言って超ふつーかな…。ただその後は、何も言えなくなって沈黙…。

手術室のランプが消え、父さんが出てきた。点滴…包帯…、痛々しい父さん…。


「父さん…。」


私は駆け寄ると、父さんに声をかけた。


「家族の方ですね。手術は一応終りましたが、これからちょっとご説明します。応接室でお待ち下さい。」

お医者さんはそう言い、看護士に何か呟くとそのまま行ってしまった。

「ご家族の方は、こちらへ。」


看護士は彼女のほうを向いて言う。

「あの、私なんだけど…。」


私は妙に強い口調で言う。
少し困ったような顔をした彼女を横目に、私はその場を離れた。
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