君が好きだというならば~episode1~
老人のその言葉に
さっきまで解けていた緊張感を再び呼び戻す。
…ただの老人じゃないな………
少年は老人を鋭い眼で見据え、
しばらく二人の間に不穏な空気が流れる。
「あなたは――?」
質問には答えず、逆に相手に問い返す。
「獣のような眼をしているのぉ…。
そう警戒するでない。その身体、立っているのもやっとであろう?
ついてきなさい。
わたしのもとで、体を休めていくとよい」
老人もその問いには答えず、元来た道を引き返す。
そう簡単に相手を信じてはいけないが、
老人に殺気は感じられず、後をついていくことに決めた。