君が好きだというならば~episode1~


に、兄様!?

なんでこんなところに!?



「侍女達が騒がしいから
何やってるかと思えば…
こんなところにいて…。

どうせ、また鍛冶屋のディランのところにでもいたんだろ?
見ろよ、
服がすすだらけじゃないか!」


怒り心頭の兄様を目の前に、叱られている私は憂鬱だった。


よりによって、兄様に見つかるなんて…
あぁ!今度は何時間お説教されるんだろう…。


私の心中など知らない兄様は更に続けて

「全く…、ディランにもひとこと言ってやらないとな!」

「えっ…ま、待ってよ!――」



ディランは何にも悪くないのに!
とゆうか、私が一方的にかくまってもらっていただけなのに!



私がそれ以上喋る前に、私の首根っこを掴んで
兄様はそばの扉を勢いよく開けた。



「おい!ディランっ!」

部屋の中では
初老の男性が釜戸の前で仕事に精を出していた。


彼の本業は鍛冶屋なのだが、
50年ほど前から、この城で暖を取る仕事を請け負っている。


「やあ、バースじゃないか、久しぶりだね。」


大声を出す兄様とは対照的に
穏やかな様子で振り返ったディラン。


「あ、あぁ……久しぶり…。
――って、じゃなくて、
何度言ったらわかるんだ!
こいつをかくまうようなことはするなって
あれほど言ったろ!」


ディランの穏やかな雰囲気に、一瞬怒りを引っ込めるが
すぐに本来の目的を思い出して、


「だいたい、ディランがそんなんだと、こいつはつけあがるだけだぞ!」


 なっ!?
何よ!つけあがるって!
ディランは私の善き理解者なのよ!?
兄様のわからず屋!


と、口に出して言ってやりたいのはやまやまだが
その後の兄様の反応が分かるだけに
横目で睨むに留まる。


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