君が好きだというならば~episode1~


それを聞いたバースは、兄様に向けていた視線を私に移すと。

「やぁ、姫様。

捕まっちゃいましたね。」


なんて、悪びれた様子もなく茶目っ気たっぷりに舌を出しておちゃらける。



だ、だめよ!ディラン!
そんな態度じゃ兄様が――


「まぁまぁ、落ち着いて、バース。

姫様の緊急事態だったんだ。
顔面蒼白でね…。
気持ちを落ち着かせるぐらいは、ここにおいてやってもいいじゃないか」


ディランは穏やかな笑みで言葉を続け、
青筋立てた兄様に視線を移す



 っていうか、緊急事態って……。姫探ししてた俺達のほうがよっぽど緊急事態だったょ…


何を思っているのやら、兄様の溜め息はいつも絶えない。そして今日もまた然り…。



「お前さんも、いつも肩に力ばかり入れないで、たまには休みにきな。

…………すすまみれになるのを覚悟でな」


そう言ってウィンクをとばすディランに、怒る気力も失せたのか、
兄様は軽く溜め息をつくと、



「そうだな…
そのうち、お邪魔するよ」


弱々しい笑みでそう答えていた。



 に、兄様が笑ってる!?
なんだか、お説教の時間はなくなりそうな雰囲気だわ!

よくやったわディラン!


兄様に隠れて、ディランに目配せ……

しかしその後
きっちり、バースにしぼられて
姫様は侍女達に引き渡されたのだった。



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