ぼくと世界とキミ

ふと薄れゆく意識の中、誰かの気配を感じた。

それは覚束無い足取りで、一歩一歩踏み締める様に俺に近付いてくる。

急に耳元に荒い呼吸音が迫ってきたかと思うと、腕を引き寄せられ立ち上がらせられた。

それは……さっきの《兵士》だった。

兵士は俺を肩に担ぐと、今にも倒れてしまいそうな頼りない足取りで、暗い廊下に向かい歩き始める。

一歩踏み出すごとに襲われる激しい痛みに耐える様に、兵士は苦しそうに小さく呻く。

しかし兵士が立ち止まる事は無く、真っ直ぐに出口に向かい歩き続ける。

……やめてくれ……俺なんて……助けないでくれよ。

その思いが声になる事は無く、ただ頭の中に浮かんでは虚しく消えていく。

傷だらけの兵士は扉を抜け廊下に出ると、ただ真っ直ぐに前だけを見つめ、血に濡れる赤く長い廊下を進んで行く。

ゼイゼイと呼吸を荒げ時折よろめく様に壁に手を付くが、決して倒れようとはしない。

……やめてくれよ。

……このままじゃ……あんたが死んじまう。
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