ぼくと世界とキミ
第十四話 叶わぬ願い
ふと目を覚ませば……そこにはスプリングの利いたベッドに柔らかい枕、そしてフカフカの掛け布団。
……何日振りだろか。
久しぶりの感触を堪能するために寝返りを打ち、もう一度静かに目を閉じる。
さっきまで何か夢を見ていた気がするが……やはり思い出せない。
フカフカの羽毛布団がとても心地よく、どうやらこのまま眠れてしまいそうだ。
きっとこの布団には魔力が籠められていて、触れる者全てを心地よい眠りに誘うのだ。
そんなくだらない事を考えていると、急に布団が何者かによって奪われた。
寝起きで働こうとしない頭を必死にフル回転させ、状況を判断するために辺りを見回すと……そこには不敵な笑みを浮かべたジルが布団を片手に立っている。
「……おやおや……勇者様は随分と元気がよさそうだ」
そう言ってジルが嫌味たっぷりに眉を吊り上げ、しかし少し安堵した様に俺の顔を覗き込む。
そういえばなぜ俺はベッドの上になんて居るのだろうか。
たしか迷いの森で……その先の記憶が無い。