ぼくと世界とキミ

「……ここは?」

再度辺りを見回すと、そこは知らない部屋。

「ここは森を抜けてすぐ近くの町だ。メルキア領内のな」

「……どうして」

ジルの説明にポカンと口を開けたまま声を漏らす。

「お前はあの森で倒れたんだ。急に倒れていくら呼んでも目を覚まさないし……俺が森からここまでお前を背負ってきたんだぞ?感謝しろ」

そう言ってジルはその時の苦労を思した様に、大きな溜息を吐いた。

「どうやって……森から?」

その俺の問いにジルは少し眉を顰めると、そっと俺から視線を外す。

「あの竜が出口まで送ってくれた」

「……そっか」

ジルの応えに小さく頷いて返すと同時に、あの時の記憶が瞬く間に蘇った。

……俺は正しい事をしたのだろうか。

もしかしたら取り返しのつかない事をしてしまったのかもしれない。

……今となっては……もう遅いけれど。
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