ぼくと世界とキミ
それから泥団子を食べさせられたり、髪の毛を引っ張られたりとなかなかハードな時間が過ぎていき、日が暮れクタクタになるまで子供達と遊んだ。
次第に日が暮れ、世界が美しいオレンジに染まって行く。
すると母親達が子供達を迎えに現れ、一人、また一人と手を振って帰るべき家へと戻って行く。
黄昏時の夕闇の中、母親に手を引かれ、眩しい笑みで千切れそうな程に手を振る子供達を見送っていると……いつの間にかセリアと俺だけがその場に残った。
穏やかな風と波の音の中、そっと隣に立つセリアを見つめる。
セリアは子供達の離れて行く背中を見つめたまま、優しい頬笑みを浮かべていた。
「……子供……好きなの?」
何気なくそう問い掛けると、セリアは大きく頷いて返す。
「うん。大好き」
俺に向けられたわけではないともちろん分かっていたが、『大好き』というセリアの言葉にほんの少し頬が赤くなる。
「セリアはいい母親になれそうだな!!」
もちろん精一杯褒めたつもりだったが、セリアはほんの少し口を開くと、顔を曇らせ俯いてしまった。
「ご、ごめん!!俺、なんか変な事言ったか!?」
只ならぬ雰囲気に慌てて謝り、俯くセリアの顔を覗き込む。
「……違うよ。皆が帰っちゃって……ちょっと寂しくなっただけ」
そう言ってセリアは顔を上げ……笑った。
でもその笑顔にはいつもの華やかさは無く、どこか消えてしまいそうな儚い頬笑みだと思った。