ぼくと世界とキミ
「ねぇ、ロイ。知ってる?この湖には伝説があって《フレイラ》の花弁を湖に投げて祈ると願い事が叶うんだって」
沈んで行く燃える様な太陽を見つめたまま、セリアは小さく呟く。
「……へぇ?じゃあフレイラの花、探してみるか?」
そう言ってキョロキョロと辺りを見回し、目的の花を探した。
確かフレイラの花は水辺に咲く花で、綺麗なピンクの花だった気がする。
……どっかその辺にでも……
「ジャ~ン!!実はもう持ってたりして。さっきの子達に貰ったの」
セリアはそう言うと誇らしげに胸を張り、可愛らしいピンク色の二枚の花弁をヒラヒラと振って見せる。
「……はい!!」
そう言ってセリアは俺の手にピンクの花びらを乗せると、ニヤリと笑って見せた。
「せ~ので投げるよ?投げた時にちゃんと願い事するんだからね!!」
そのセリアの言葉に頷いて返すと、セリアは真剣な顔をして花弁を見つめ、湖に向かって構える。
「せ~の!!」
その掛け声と共に二人で同時に花弁を投げると、二枚の花弁は重なり合う様に風に乗って飛んで行った。
それと同時に手を組み、目を閉じて心の中で願い事を唱える。
それから暫く沈黙が続き、そっと目を開くと……セリアはまだ懸命に何かを祈っている様だった。
その顔はいつになく真剣で、一体何を祈っているのか……とても気になった。
「……セリア?」
「……もう少しだけ」
俺の呼び掛けにセリアは目を閉じたままそう呟くと、グッと強く手を組んだまま微かに唇を震わせていた。
その彼女の風に靡く美しい髪を見つめたまま、次第に迫る来る静かな夜を感じていた。