ぼくと世界とキミ
「ロイは何をお願いしたの?」
祈りを終えたセリアはそう言って、俺を窺う様に見つめた。
「俺は……大切なモノを守れますように……って。……セリアは?」
その俺の問いにセリアはほんの少し瞳を揺らすと、それからそっと湖に視線を向けた。
あんなに長く祈るほどの……強い《願い》
彼女の答えを待つように、ただ何も言わないままセリアを見つめる。
「秘密!!」
「えぇええ!?」
その答えに思わず声を漏らすと、セリアは困った様に笑って首を傾げた。
「なんだよ……俺は正直に言ったのにさ~」
そう言って冗談ぽく拗ねて俯くと、突然……セリアの手が俺に向かって伸びた。
そしてその小さな白い手は俺の頭を優しく撫でる。
途端に顔が真っ赤に染まり、慌てて……でも、そっとセリアの手を払った。
「こ、子供扱いするなよな!!恥ずかしいだろ!?」
顔を真っ赤にしたままフイッと顔を背けて見せると、それを見てセリアは面白そうにクスクスと笑った。
「……さ、部屋に戻ろう?ジルが待ち草臥れてるはずだしね」
そう言ったセリアにトンと背中を押され、宿屋に向かって無理やり歩かされる。
なんだか上手く誤魔化された気がしたが、セリアの背を押され……そのまま大人しく歩き続けた。
*
前を歩くロイに気付かれない様に、セリアはそっと夕日の沈む暁の水面を振り返った。
セリアは二枚の花弁が消えて行った遥か彼方を寂しそうに見つめ……微かに唇を震わせる。
「きっと……叶わないから」
その彼女の呟きと共に急に冷たい風が吹き、木々がまるで泣いているかの様にざわめく。
その木々の泣き声が響く中、セリアの白い頬をほんの一筋だけ……涙が流れた。