ぼくと世界とキミ

「起きろ!!」

今ではすっかり慣れてしまった、まるで目覚まし時計の様にけたたましいジルの怒声で目を覚ました。

そっと目を開け、部屋の窓から外を見ると、そこには……美しい夕焼けが見える。

「……って、夕焼け!?」

そう声を上げ勢いよくベッドから飛び起きた。

窓から見える湖は一面鮮やかな橙に染まり、そして遥彼方から静かな闇が迫って来る。

どうやらすっかり寝過してしまったらしい。

「急いで支度をしろ。次の船が今日の最終便らしい」

ジルはそう言いながら、忙しそうに部屋の荷物を纏めていた。

……ジルまで寝坊するなんて珍しい。

よく見ると顔色が悪い。

……二日酔いか?

そんな事を考えながら支度をするため洗面台に向かおうとしたその時、部屋のドアがゆっくりと開かれた。

「……気持ち悪い」

そう言ってセリアが口に手を当て青い顔をしたまま、フラフラと覚束ない足取りで部屋に入ってきた。

セリアの顔色は酷く悪く、表情も生気を失った様に淀んでいる。

……ケーキの食い過ぎか?

「……おいおい。二人とも大丈夫かよ!?」

二人に尋ねるが……返事は返ってこない。

二人は答える余裕も無い様で、時折口に手を当てたまま彫刻の様に動かなくなった。

……だ、だめだ。

とりあえず顔を洗おうと足早に洗面台に向かったその時。

「……いたたたっ!!」

急に腹部に鈍い痛みが走り、腹を押さえたまま力無く床に膝をつく。

腹からグルグルと不気味な音が聞こえ、それと共に悶絶し、床を転げ回る程の痛みが俺を襲う。

……フェ、フェルムスープの食べ過ぎか?

腹を押さえたまま床を転がりまわる俺の様子を見ていた二人が……大きな溜息を吐いた。

 
全員が昨日の行いを後悔したまま……最悪のコンディションで旅立つ事になったワケである。
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